MENU

領収書の基礎知識と正しい書き方・作り方・注意点のすべて

ビジネス・個人を問わず「お金のやり取り」を証明するために欠かせないのが「領収書」です。
領収書は、金銭授受の証拠となる公式な書類であり、税務申告や経費精算など、さまざまな場面で重要な役割を果たします。
この記事では、領収書の意味・書き方・発行手順・注意点・電子化の動向・よくある疑問やトラブル対応まで、実務で役立つ知識を詳しく解説します。

目次

1. 領収書とは?

● 領収書の定義

領収書とは、「確かに○○円を受け取りました」と、金銭授受の事実を証明するための書類です。
現金だけでなく振込やクレジット決済など、支払手段を問わず発行できます。

● 請求書・納品書との違い

  • 請求書:これからお金を請求します、という意思表示
  • 納品書:品物やサービスを納品しました、という証拠
  • 領収書:実際に代金を「受け取った」証拠

税務調査や会計監査では、領収書の有無が経費計上や損金算入の可否を左右することもあります。

● 法的効力と保存義務

  • 民法上「金銭消費貸借契約書」と同等の証拠能力を持ちます
  • 取引先・発行側・受領側ともに「7年間」の保存義務(法人税法・所得税法・電子帳簿保存法等)
  • 電子データも法的証拠となる(電子帳簿保存法要件を満たす場合)

2. 領収書の基本的な書き方・記載項目

● 必須記載事項

領収書には、以下の基本項目を必ず記載しましょう。

  • タイトル(領収書)
    書類上部中央に「領収書」または「Receipt」等と明記します。
  • 発行日
    金銭を受領した日付。和暦・西暦どちらでも可。
  • 金額
    受領した正確な金額を「〇〇円」等と明記(消費税額を含む/分ける)
  • 但し書き(用途・目的)
    例:「○○代として」「○○費用として」など。何の対価かを明確に。
  • 宛名(上様・空欄は避ける)
    支払った人・会社名(正式名称)を記載。
    ※「上様」や無記名は経費否認リスクあり
  • 発行者名・住所・連絡先
    発行者の氏名・会社名・住所・電話番号など。押印(実印・社印・認印)が一般的。
  • 収入印紙(5万円超の現金領収)
    5万円超(消費税込み)の領収には印紙(200円)が原則必要(印紙税法)。
    クレジットカード・振込等は印紙不要。

● 任意記載・推奨項目

  • 取引内容の明細(品名・数量・単価等)
  • 支払方法(現金・振込・カード等)
  • 領収番号・管理番号
  • 担当者名

● 電子領収書の追加要件

  • 発行日時の記録(タイムスタンプ推奨)
  • 電子署名や発行元サーバーの保存記録
  • 電子帳簿保存法の保存要件(訂正削除履歴・検索性など)

3. 領収書の作り方・発行方法

● 手書き(市販の領収書)

  • 文具店・100均等で市販されている領収書台帳を使う
  • 複写式なら控えも自動作成
  • ボールペン等で丁寧に記載し、押印を忘れずに

● パソコン(Word・Excel・テンプレート)

  • 自作テンプレートやフリー素材を活用
  • 必須項目の漏れや金額の誤記に注意
  • 印刷後に押印(電子印可の場合も)

● 会計ソフト・クラウド発行サービス

  • freee、弥生、Money Forward、Misocaなど
  • 電子発行・PDF発行や送信もワンクリック
  • 領収番号・管理や保存も一元化できる

● 電子領収書・PDF領収書

  • メール添付やクラウドダウンロード形式が主流
  • 電子帳簿保存法に則り、発行・保存のルールを守る
  • タイムスタンプや訂正履歴の管理も要件化

4. 領収書作成・発行時の注意点

● 宛名(上様・空欄)のリスク

  • 「上様」や空欄では、経費として認められないリスクがある
  • 必ず実際の支払者(会社名・氏名)を明記する
  • 取引先の依頼で「上様」希望の場合も、経費化できない旨を事前説明

● 金額の誤り・訂正方法

  • 訂正箇所は二重線・訂正印で修正、もしくは再発行が原則
  • 消せるペン・修正テープは絶対NG
  • 再発行時は「再発行」や「再」等の表示を入れる

● 印紙税の注意点

  • 5万円超の現金領収には収入印紙200円(印紙税法別表第一第17号文書)
  • 「印紙貼付欄」へ貼り、消印(割印)を必ず行う
  • クレジットカード・銀行振込・電子マネー等は印紙不要
  • 消費税が外税表示で明確な場合、その部分は印紙税の課税標準から除外できる

● 電子領収書・デジタル発行の注意点

  • メール送信・クラウド保存OKだが「訂正削除履歴」「検索要件」を満たすこと
  • 紙と同じ証拠能力がある
  • スマホの撮影画像は証拠力が下がるため、PDF発行推奨

● 二重発行・重複発行の防止

  • 複写式なら控えを必ず保存
  • 管理番号やシリアル番号で一元管理
  • 紛失時・再発行時の履歴を必ず残す

5. よくある質問(FAQ)と実務アドバイス

領収書の印鑑は必須?
  • 法律上は必須ではありませんが、トラブル防止・証拠能力強化のために押印が一般的
  • クラウド発行の場合は「電子印」でもOK
会社の経費精算で「レシート」は使える?
  • 領収書がなくても「レシート」でも原則有効
  • ただし「何に使ったか明記」「宛名が自社」ならより安心
5万円未満なら印紙不要?
  • 2024年4月からは「受領金額5万円未満」なら消費税込みでも印紙不要
  • 5万円ぴったりや5万円超は必ず印紙が必要
電子領収書の保存はどうする?
  • 電子帳簿保存法に則り、データ保存・検索・訂正履歴の要件を満たす必要
  • 印刷して保管だけでは法令上は不十分
  • クラウド保存・システム管理が推奨
クレジットカード決済の場合は?
  • 店舗・事業者が「クレジット控え」や「利用明細」を発行し、それが領収書代わりとなる場合も
  • 取引先が紙の領収書を求める場合、決済日・金額・用途を明記して発行可能(印紙不要)

6. 実務で役立つ発行・管理のコツ

● 複数枚発行・控え管理の徹底

  • 取引先用、自社控え、税理士・監査用など
  • 手書きの場合は複写式、デジタルはPDF控え推奨

● 取引内容・明細の具体的記載

  • 一式・内容省略ではなく、できる限り具体的な品目・サービス名を記載
  • 会計監査・税務調査時の証拠能力が高まる

● 支払手段ごとの注意

  • 現金…印紙、収受方法を明記
  • 振込・カード…支払方法・取引IDなども備考欄に
  • 電子マネー…取引履歴・利用明細もあわせて保存

● 保存方法の最適化

  • 紙…日付順・番号順にファイリング、耐火保管庫推奨
  • デジタル…クラウド保存、バックアップと権限管理
  • 取引先・社内での検索や共有性も重視

7. 電子領収書・インボイス制度への対応

● 電子帳簿保存法のポイント

  • 2022年施行の改正電子帳簿保存法では、紙・電子データいずれも「訂正・削除履歴」「検索機能」など要件を満たす必要あり
  • タイムスタンプ、システム証明書などが推奨

● インボイス(適格簡易請求書)との関係

  • インボイス発行事業者なら「登録番号」や「消費税率」「税額」を記載
  • 小規模取引や消費税非課税取引では「簡易領収書」も活用可能

● 今後の領収書発行のトレンド

  • 電子化、クラウド管理、ペーパーレスが進展
  • 印紙レス、印鑑レスも進む
  • 取引先の希望・社内規程に応じて柔軟に発行方法を選ぶ

8. トラブル防止と法的リスクの回避

● 経費否認・重複計上を防ぐ

  • 宛名、但し書き、金額、発行日などを正確に記載
  • レシート・領収書の二重計上に注意

● 領収書の紛失・破損時の対応

  • 速やかに再発行依頼(再発行の旨を明記)
  • 控えやシステム履歴を確認

● 不正発行・虚偽記載のリスク

  • 税務署や監査で不正が発覚すれば、重加算税・罰金の対象
  • 依頼された場合も「事実通り」に発行、虚偽記載は厳禁

9. まとめ

領収書は、ビジネスの信頼を守り、税務・会計・法務を支える重要な書類です。
正しい記載と発行、管理・保存のルールを守ることで、トラブルを未然に防ぎ、経費計上や損金処理もスムーズになります。
電子化やインボイス制度など新たな法令や運用にも柔軟に対応し、効率的・安全な領収書管理を実践しましょう。
本記事を通じて、「領収書業務のレベルアップ」を目指していただければ幸いです。

参考・出典

  • 国税庁「領収書・レシートの取り扱い」
  • 電子帳簿保存法ガイドライン
  • インボイス制度の概要
  • 会計ソフト各社公式Q&A
目次