人生の転機となる「退職」。会社を円満に去るためには、ルールやマナーを守った正しい書類提出が不可欠です。
退職の意思を伝える「退職願」と、正式な手続きを行う「退職届」。この二つには明確な違いがあります。
本記事では、退職願・退職届の違い、正しい書き方、注意点、最新の実務事情、よくある質問、提出後の流れまで、退職をスムーズに進めるための知識を詳しく解説します。
目次
1. 退職願と退職届の違い
● 退職願(たいしょくねがい)とは?
「退職願」は、会社に対して退職を願い出る書類です。
まだ会社に承認されていない段階の「申し出」であり、受理前なら取り下げも可能です。
一般的には直属の上司に口頭で相談後、「退職願」を提出して意思を正式に伝える流れです。
ポイント
- 効力は提出時点ではなく、会社が受理(承認)した時点で発生
- 受理前なら撤回できる(ただし、会社の就業規則による場合も)
● 退職届(たいしょくとどけ)とは?
「退職届」は、退職日が決定したあとに正式に届け出る書類です。
これは「通知」となり、提出後は原則として撤回できません。
法的にも強い効力があり、提出=契約解除の申し入れとなります。
ポイント
- 効力は提出時点で発生
- 撤回は原則不可(民法627条など)
● 「退職願」「退職届」「辞表」はどう違う?
書類名 | 意味・使う場面 |
---|---|
退職願 | 一般社員が会社に「辞めたい」と希望を伝える |
退職届 | 退職が確定した後、会社に正式な「辞職通知」を出す |
辞表 | 主に役員・公務員が「役職の辞任」を表明する |
2. 退職までの流れとタイミング
- 転職・独立・休養など理由を明確に決定
- 直属上司に口頭で「退職したい」意思を伝える(退職願)
- 就業規則を確認し、指定様式や提出先を調べる
- 退職願を正式に提出(希望日・理由を明記)
- 会社側と面談・引き継ぎ日程などを調整
- 退職日・業務引き継ぎ・返却物確認などを完了
- 退職届を提出(最終出勤日前~退職日当日)
- 各種証明書や退職金などを受け取り、手続き完了
目安
- 法律上は「2週間前まで」に申し出ればOK(民法627条)
- 就業規則で「1ヶ月以上前」と定める会社も多い
- 円満退職を目指すなら、1~2か月前がベスト
3. 書き方の基本と注意点
● テンプレート
● 書式・レイアウト
- 用紙サイズ:A4またはB5の白無地
- 記載方法:縦書き・横書きどちらも可(一般的に縦書きがフォーマル)
- 筆記具:黒のボールペン、万年筆、サインペンなど(消えるインクNG)
- 押印:氏名横に認印(シャチハタ不可)
● 記載内容のポイント
- 書類タイトルは中央寄せで「退職願」「退職届」
- 前文は「私儀 一身上の都合により」で始めるのが一般的
- 退職理由は「一身上の都合」とだけ記載(詳細は不要)
- 日付は和暦・西暦どちらでもOK
- 所属・氏名は正式名称、押印も忘れずに
- 宛名は会社名+代表者名+「殿」が基本(個人の場合は不要なことも)
4. 提出時のマナーと実務のコツ
● 提出タイミング・伝え方
- 直属上司にまず口頭で伝えるのが礼儀
- 相談→了承後に書類提出
- 就業規則を事前確認(会社によってフォーマット・期日が異なる)
- 提出は直接手渡しが原則(やむを得ない場合は郵送・メールも可)
- 「一身上の都合」「健康上の理由」「家庭の事情」など前向きな表現が◎
● 封筒・郵送時のポイント
- 白無地の封筒(長形3号・4号)を使用し、三つ折りにして入れる
- 封筒表:中央に「退職願」または「退職届」、裏面に所属・氏名
- 郵送時は添え状を同封する
● 注意したいNG例
- 突発的な提出・無断欠勤は厳禁(トラブルの元)
- SNSなどで先に公表しない(守秘義務違反の恐れ)
- 退職理由を詳細に書かない(不利益・トラブルの防止)
5. 退職後の手続き・確認すべきこと
● 会社から受け取る書類
- 雇用保険被保険者証
- 年金手帳
- 源泉徴収票
- 退職証明書(必要時)
- 健康保険資格喪失証明書
● 退職後に必要な公的手続き
- 健康保険の切り替え(任意継続・国保加入)
- 年金の切り替え(第2号→第1号被保険者など)
- 失業保険の申請(ハローワーク)
- 住民税の支払い方法変更
- 転職先が決まっていれば入社手続き
6. よくあるQ&A
Q1. 「退職願」と「退職届」、どちらを先に出すの?
まず「退職願」で希望を伝え、会社と退職日などを相談し、確定したら「退職届」を提出します。
一部企業では「退職届のみ」でOKのケースも。
Q2. 退職届を提出したら撤回できる?
原則できません。どうしてもやむを得ない場合は早急に相談しましょう。
Q3. パワハラ等で退職を強要された場合は?
強要された退職届は「無効」となりうるため、労働基準監督署や労働局など公的機関に相談を。
Q4. 電子データやメールでの提出は有効?
原則は紙面提出だが、最近は電子提出OKの企業も増加(就業規則優先)。
データ提出時は削除防止・内容証明化のためPDF化推奨。
7. 退職をめぐるトラブル防止アドバイス
- 退職理由や日程などは必ず「書面」「メール」で残す
- 有給消化や最終出勤日について早めに相談
- 退職金・社会保険・離職票の受け取りを必ず確認
- 引き継ぎ書や会社の資産返却も重要
8. まとめ
退職は誰しも一度は通る大事なステップです。
退職願・退職届の違いと「正しい書き方」「実務での注意点」を押さえておけば、円満な退職が可能です。
最近では電子化も進み、柔軟な提出方法も増えていますが、大切なのは「会社との信頼関係」と「基本マナーの順守」です。
本記事を参考に、トラブルのない円満な退職を目指してください。
参考・出典
- 厚生労働省「退職時の手続き」
- 労働基準法・民法627条・各種実務マニュアル